「蓼科日記」について











〔2018.8 曝書のとき〕

「蓼科日記」全18巻は、野田高梧の山荘・雲呼荘に置かれたノート。訪れた人が自由に書き込む日記で、冒頭には野田あるいは小津の筆跡で「この山荘に来訪された方は かならず この日記に 何か お書き留め 下さい」と書かれていました。
書き込んだ人は、野田・小津を始めとして、新藤兼人、山内久、山内玲子、井上和男、厚田雄春、山内静夫、宮川一夫、池部良、佐田啓二、三上真一郎等々の当時のそうそうたる映画人ばかりか、しばしば雲呼荘を訪れた学生や若者たちも大勢含まれていました。
その意味で、この18冊のノートは、老若、書き手の有名無名を問わず、当時の蓼科や映画について、なによりも「時代」について知る絶好の資料であるとともに、いまから見れば羨ましいような彼らの交わりを目の当たりにする、まことにたのしい読み物になっています。
新・雲呼荘ではこの日記のレプリカ作成プロジェクトを進めると同時に、原本はやはり涼しい風の渡る蓼科――つまり書かれた「現地」に置くことが野田、小津の意に沿うことではないかと考えて、大切に保管しています。